累計3000人のこどもたちに届けた熱い想い~28歳忽那健太の情熱点火授業~

愛知県瀬戸市を拠点に活動する世界一情熱的なラグビーチームGpassioners。忽那 健太(くつな けんた)さんは2021年10月からチームにジョイン、グラウンド上でチームを鼓舞し続ける姿が一際目立つ。普段は体育教員・ラグビーコーチ・選手・ラジオパーソナリティ・ライフコーチと複数の領域で活動する。「一度しかない人生を後悔したくない。全て自分がやりたいことです。」と語る。実業団ラグビーチーム退団直後の26歳のときにガン宣告を受け、人生に対する考え方が一変。自身の経験を通じて熱い想いを届ける活動が徐々に広がっている。今回はその「情熱点火授業」の取り組みと展望を伺った。

Q.さっそく本題に入るのですが、「情熱点火授業」って何ですか?

 

A.この情熱点火授業というのは僕が勝手に名前を付けているだけなんですけど、自分が体育の先生として通う小学校・中学校で始めた道徳の時間に行う授業のことです。

 

Q.どのような授業なのですか?

 

A.道徳授業の内容は毎回異なります。ただ「人生ワクワクする方を選ぼう。未来のことを今のCAN(できること)で考えすぎないでいよう。夢や目標を持って前向きに挑戦していこう。」というメッセージを一貫して生徒たちに伝えています。これは僕がラグビーと共に歩んできた今までの人生の成功や失敗体験、ガン宣告から生き延びられた経験、会社を辞めて今の複数の職業をやると決断し実現してきた経験などから学んだことです。多感な時期にいる学生たちに少しでも将来のことについて考えるときのヒントになってほしいと思って活動しています。

 

Q.そもそもなんでこの授業を始めようと思ったんですか?

 

A.2022年の4月から瀬戸市内の中学校で体育の非常勤講師として働き始めました。このときは「情熱点火授業」をやろう!なんて思っていませんでした。ただ、これまでずっとやりたかった学校の先生になれたからには授業だけでなくもっと生徒と関わる時間を作りたいなと思いました。そこで学校に着任したその日の朝から校門の前に立って登校してくる生徒たち全員にあいさつ運動をしました。生徒たちからすると「この暑苦しい人は一体誰だ?」って感じていたと思います(笑) 。
でもそんなことは気にせずにエネルギー全開であいさつをし続けました。それから毎朝あいさつ運動をするようにしました。

 

Q.凄い熱量であいさつをされていったのですね。

 

はい。あいさつは人間関係を構築する上で非常に大切だと思っています。その勢いで職員室でも積極的にあいさつを行っていきました(笑)。というのも、あいさつ運動をはじめて、あいさつを返してくれない生徒が結構いることに気づき、ショックを受けたんです。生徒のお手本をまずは先生たちが示した方がいいと思い職員室でも朝から元気な声であいさつを始めました。

 

Q.あいさつからスタートしたんですね!それから情熱授業をはじめることになったきっかけがあるのですか?

 

A.はい。実はこの運動以外にも『情熱新聞』というものを職員室でも発行し始めました。自分の有り余るエネルギーを職員室の先生方にもお裾分けしようと勝手なおせっかいを始めようと思ったのがきっかけです(笑)。校長先生に直談判して職員室の一角をお借りして読んだ人の心が熱くなるような記事を書いたり、新聞から記事を切り抜いて掲載しました。最初は周りの先生から「これは何だ?」と笑われることもありました。でもこれがきっかけで、声をかけてくださる先生もでてきました。そんなときにたまたまある先生から「道徳の時間にぜひうちのクラスの生徒に忽那先生のお話を聞かせてほしい」と依頼されたんです。そのときに始めたのが結果的に今の情熱点火授業になりました。

 

Q.そこからどうやって3000人の子どもたちと出会えたのですか?

 

最初はクラスの30人の生徒の前で僕自身がガンを克服した話や将来の夢を持つことの大切さを語りました。それを皮切りに活動が噂となって他の先生からも依頼を頂けるようになりました。結果的に300人規模の学年集会や、他校の小中学校にも出前授業をするようになったり、小中学校の枠を超えてスポーツの専門学校や先生方の教員研修の場で授業を行うようになりました。『想い』というのは心に火をつけ、その火は周りに広がっていくということを身に染みて感じています。

 

Q.忽那さんならすぐに実現できそうですね!「情熱を点火する人」というフレーズがすごく似合っている忽那さんですが、どこからそのパッションやエネルギーが湧いて来るのですか?

 

A.よく聞かれるのですが自分でもわかりません(笑)。無限に湧いて来るんですよね。もしかしてこれかな?と思うのは2つあります。一つは両親の影響です。特に母親は今でもそうですが、僕が小さいときから「今日は天気がいいね」「ごはんがおいしいね」といったようにすごく些細なことでも幸せを感じるような言葉を語りかけてくれました。世の中が楽しい場所、素晴らしい場所ということを教えてくれました。
もう一つはラグビーです。ラグビーは全身を使って自分を表現できるスポーツだと思っています。走る・ぶつかる・投げる・立ち上がる。自分のエネルギーをこのスポーツにぶつけ続けていることも無限に湧いてくるエネルギーと関係しているかもしれません。

 

Q.改めて「情熱点火授業」で伝えているメッセージを聞かせてください。

 

A.一番伝えたいのは、一度きりの人生ワクワクする方を選ぼう!未来のことを今のCAN(自分ができること)で考えすぎないでおこう!夢や目標を持って何事も前向きに挑戦していこう!ということです。
自分の将来のことなのに、今これができるからこうしよう。とか、今までこれができなかったから今後もできない。というように考えてほしくない。未来は自分次第で何者にでもなれると思いますし、人の可能性は無限大だと信じています。そして強く思うのは「自分の好きなことや得意なこと、才能は必ず自分の中に眠っている」ということです。それに気づけるかどうかが重要です。これは数多くの挑戦をして気付くしかないと思っています。

 

Q.最後にコラムを読んでくれている方に伝えたいことは?

生徒たちにもよく伝えていることなのですが「バッターボックスに立っていきましょう!」ということですかね。バッターボックスというのは野球でいう打者が立つゾーンのことです。日々の生活の中で自分の興味のあることに積極的に挑戦していっていただきたいです。僕は『見逃し三振より空振り三振』という言葉を大切にして生きています。子どもに限らず誰しも失敗はしたくないし、怖いものです。でもまずはバッターボックスに立っていかないと何も生まれません。バッターボックスに立たなければ三振することはないかもしれませんが絶対にヒットは生まれません。失敗は必ず成長につながります。

そんな風に考えて自分の人生を切り開いていく人を僕は増やしていきたい。だから僕は人生を通してみんなの心の底にある情熱をもっと燃え滾るものにしていきます。考えるだけで心が燃えてきます。
そして、大切なのは目標が決まったらあとは『やるか、めっちゃやるか』の精神です。この言葉と出会えたのも僕のエネルギーが無限に湧いてくる一つの要因かもしれませんね!

 

話を聞いた人:忽那健太(くつな・けんた)

1994年生まれ、愛媛県出身。地元のラグビースクールに通い始めたのがきっかけで楕円球を追いかけることになる。負けん気の強さと向上心によりみるみる頭角を現し花園常連校である島根県の強豪、石見智翠館高校へ進学。主将として春の全国選抜大会準優勝、花園ベスト8に貢献。その後、名門筑波大学へ進学。同大学でも主将としてチームを牽引。卒業後、三重県鈴鹿市に本拠地を置く日本最高峰ラグビーリーグ所属のラグビーチーム、ホンダヒートにてプレー。国民体育大会で7人制ラグビーの部で優勝も経験。同チームを21年に引退。2021年秋・突然のガン宣告。病院生活を終え、一度は離れたラグビーへの想いが再燃した。ラグビーや教育と携わる仕事がしたく会社員を辞め、河合(Gpassioners代表)との出会いをきっかけにGpassionersでプレーヤーとして復帰することを決意。情熱を測る入団セレクションを通過し2021年10月よりGpassionersに入部。

  • 関連記事
  • おすすめ記事
  • 特集記事
PAGE TOP